フジサンケイビジネスアイ
2006年7月3日(月)100円
19面 かじれ!ケーザイくん
「057」
熟年離婚 2007年問題

かじれ!ケーザイくん



記事内容

■ケーザイ効果につながるのは、ラブラブ夫婦or熟年離婚?

離婚なんて、ウチの夫婦に限ってありえないと思っていた。しかし、ある日。新聞を読みながら「老齢厚生年金分割制度が変わるんだってな」と何気なくつぶやいたら、「へえ、そう」。興味がないかのようによそおった妻が、一瞬ビクッとしたように見えた。まさか・・・。

熟年離婚は、2007年問題の中で最大の課題ともいわれている。もはやドラマの中だけの話ではない。そもそも、団塊世代の退職が始まり、労働力の枯渇が叫ばれる2007年問題と熟年離婚が結びついた理由は、改正された老齢厚生年金分割制度にある。離婚を07年4月以降に延ばせば、老後の厚生年金を夫婦間で分割でき、妻は離婚しても元夫の年金の一部を受け取ることができるようになるからだ。

定年退職の日。妻からもらうのは花束ではなく、離婚届かも。事実、ここ2年は連続して離婚件数が減少。嵐の前の静けさ。妻たちが、三下り半をたたきつける時期をじっと待っているのか。不気味だ。

しかし、ケーザイ効果を考えると、明るいニュースもある。離婚件数が増えれば、元夫と元妻の住居が別々になるなど世帯が増えるため、住宅費、光熱費、通信費などが増えると予想される。さらに、潜在離婚者が07年にいっせいに離婚した場合、慰謝料の規模は2800億円程度上乗せされ、その一部が女性関連の消費市場や金融商品に流れ込むと見られている。ひとりになれば交際費も増加。恋愛に趣味にと、久しぶりのシングルライフを満喫する人も増えるだろう。熟年離婚のケーザイ効果を、約727億円と見積もる調査結果もある。

しかし、「こんなケーザイは日本を破壊する!」と全国亭主関白協会の天野周一会長は憤る。「お金の質が問題。夫婦が仲良くなって、一緒に映画を見に行ったり、レストランで食事をしたりすることで潤うケーザイもあるはず。夫婦でデートすれば、服だって新調したくなる。離婚でケーザイが潤うなんてさびしいことです。長くは続きませんよ」。関白はもともと、天皇を補佐する役目。実は同協会は、自分は家庭内ナンバー2の位にとどまって、妻を立てましょうという協会。妻が離婚を決意するのは、日頃の我慢の積み重ねが限界を超えた瞬間。そう考えると、熟年離婚へのカウントダウンは、とっくに始まっているともいえる。夫婦で楽しく暮らす老後のために、今からでもできることはある。まずは家に帰ったら、奥さんの話に耳を傾けるところから始めてみよう。
 

 
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